- 河辺一仁, 三輪誠, 佐々木裕. 交通オントロジーの半自動拡張のための交通用語認識. NLP 2015.
- 鈴木遼司, 三輪誠, 佐々木裕. 交通オントロジーを対象とした質問文のSPARQLクエリ変換. NLP 2015.
- 平博順,田中貴秋,永田昌明.自動車運転免許試験RTEコーパスの構築. JSAI 2014.
この課題については,法的な観点と技術的な観点から考えられるようです.まず,法的な観点を考えると,ある種の機械が自動車を運転するということをどのようにして許すべきなのでしょうか.ハンドルやアクセルペダル,ブレーキペダル,シフトレバーといった基本的なインターフェイスを備えたこれまで通りの自動車が存在するものとして,方法はともかく(これらの物理的に操作するのではなく電子的に操作することも考えて),これらのインターフェイスを通じて自動車を運転する何らかの機械にどのように運転免許を与えるべきなのでしょうか.やはり,試験を機械に突破してもらわないといけないような気がしてきます.
ご存じの通り運転免許は技能試験と学科試験(と適性試験がありますが,この能力については人間より機械の方が高いでしょう)から構成され,前者ではS字やらクランクやらを通過させられたりするわけで,こちらについてはおそらく画像認識が中心的な課題となるのでしょう.もう一方の学科試験は,これは機械に自然言語解析の段階から挑戦させるのか,あるいはテキストには豊富な前処理(正しい解析)が加えられており(東ロボの問題設定は現時点ではこちらでしたね)その後の推論を主に問題にするのかによってずいぶん毛色は異なるものの,前者であれば自然言語処理の出番が大いにあるように思えます.
後者の技術的な観点に関しては,交通法規や自動車の運転に必要な暗黙的な知識ををどのような形で機械が保持しておくべきかという問題があるように思われます.交通法規は頻繁ではないものの改正がなされることがあり,これについては冒頭の文献で河辺さんが指摘されているように機械にハードコーディングするべきではなく,別途,交通法規オントロジーとして,静的な形で保持しておく必要があるように思われます.
交通法規についてはあまり頻繁に改正されるようなものではないと思われるため,交通法規オントロジーは人手で作り込めばよく,そのためあまり自動獲得の要はないようには思えます.一方,その周辺に存在する,交通マナーであるとか,あるいはいわゆる危険予測で問われるような交通に関する暗黙的な知識は容易には書き尽くせないと思われます.これらをどのように獲得,表現し,その上で推論するかという課題がここにはあるように思われ,雲をつかむような話にも思えますが,何かしらの知識獲得が必要になってくる気配はあります.
さほど遠くない先にこのあたりについては面白い結果が出てくるのではないかと思われ(既にあるのかも),今後も注目していきたい分野です.
ご存知かもしれませんが『動きを理解するコンピュータ 時空間表現の計算言語学』という書籍では人や車の移動表現を扱っているようです.私は人の行動という観点から興味があり手を取ったため,計算言語学の観点からどれくらい信頼に足る書籍であるのか判断できないのが残念なのですが…西川さんに教えて頂きたいです.
返信削除上記の話とは少し毛色が変わりますが,谷口先生が書かれた『記号創発ロボティクス』内でも,言語と行動の関連についての記述があります.単語と音声の二重文節構造は他のデータにも隠れているのではということで急に自動車の運転行動の話となり,交差点を曲がる,横断歩道前に人がいるのでスピードを下げるといった行動文脈(=単語)を運転時系列データから切り分けるといったことを紹介されています.両者はみんなが思ってるよりも近いところにいるのでは?と私は考えています.