2016年1月4日月曜日

英語の苦労

ふと以下のような @niam さんのツイートを目にした:

是非はともかく,英語を母語としない研究者には英語は面倒な問題で,特に私のいる分野は国際会議への投稿および国際会議での発表が非常に重要視されているので,現在のリングワ・フランカたる英語は職業上,不可欠なものであるように思える.自分の経験を開陳することに特に意味があるとは,すなわち誰かの役に立つとはあまり思えなかったし,またそもそもこういった話をすることは自分の無能さをさらけ出すようで非常に恥ずかしいので,こういった議論からは距離を置いていたけれど,昨年から教員になったこともあって,少し自分の経験を書いてみようという気になった.

結果としてとても長い記事になってしまったので,よほどお暇な方はお読みください(研究補償説というものがあるが,その例に漏れず,自動要約の研究をしている私は,話が長いと言われてよく怒られる).これがベスト・プラクティスだ,といって,何かしらのエッセンスを抽出した記事にするよりも,経験を踏まえてディティールを語った方がよいように思えたため,長い.

基本的な考え方

先日,教員向けの研修 (Faculty Development (FD) というらしい) で,教育工学を専門とされる方から習った「学習目標」なる概念は以下の3点からなるらしい:

  1. ゴールをどう設定するか
  2. ゴールに到達したことをどう知るか
  3. ゴールまでどうやって進むか

これは教育に限らず,ありとあらゆる,何らかの目標を設定してそれを達成しようとする営みに通じることであると思われる.教育工学(あるいは教育学?)の文脈でこれを習ったことはなかったが,この3点はいつも意識している.それを踏まえて,どういうふうに勉強してきたかを少し書いてみたい.

苦難の道のり

TOEIC

修士課程を修了して前職の NTT 研究所に就職したとき,研究者とみなされうる立場になってしまったので,英語を勉強しないと困るであろうと思い,ひとまず英語を勉強しようと決心した.身近な指標としては TOEIC であろうと思ったので,とりあえず TOEIC で900を取ることを目標にした.確か就職した段階では恥ずかしながら700そこらのスコアであったように思うので,200ほどスコアを伸ばすということになる.900というスコアをどのように設定したかについては特に記憶がなく,何となく,まあ,ひとまずそのあたりであろう,と決めたように思う( TOEIC や TOEFL を主催する ETS としては, TOEIC 860以上をAクラスとみなしているようだが,今となっては TOEIC 860 でAクラスというのは率直に言って非常に甘い基準だと思う)この頃は確か以下のようなもので勉強していた:

  • TOEIC の参考書全般:参考書という商売が成立しているだけあり,参考書は基本的にはよくできている.どれも勉強すればするだけスコアが上がる.こういった参考書はスコア別になっていることが多いので,勉強しては TOEIC を受け,スコアが伸びたらより高いスコアを目標とした参考書を買ってそれを勉強した.あまりたくさん書籍を購入できるほど裕福でもなかったので,同じ本を何度か勉強していた.
  • Speech and Language Processing:自然言語処理分野において名高いこの本は英語の学習において非常に役に立った.この本は音声認識や音声合成などの話題も扱っており,7章はそれらの準備のため音声学 (Phonetics) にあてられている.その内容は,人間の調音器官(喉や舌)の解説から始まり,ある音がどのように調音されるか要点をかいつまんで書かれている.発音に関してはむかし勉強したものの,科学的かつ系統的に学んだことはなかったように思う.
  • CNN News Digest: CNN の News の一部が切り出されて, CD とその書き起こしが販売されている.当時は自動車で通勤していたので(片道40分程度),これを聴きながら通勤していた.延々と聞いていたので,書き起こしをまるまる覚えてしまったが,書き起こしと音の対応を学習するという点ではよかったと思う.内容も真面目なニュースからかなりへんてこなニュース(コンピュータがついた棺桶だとか,最新の浮気検査薬だとか,カップル向けの銀行口座だとか)まで入っており楽しめた.確か後述するベルリッツの講師から勧められたように思う.このシリーズはいろいろあるので,いくつも買って繰り返し聞いていた.
  • 英語耳:これはどこで知ったのかよく覚えていないが,この本は英語の発音のドリルのような本で,これを少し勉強した(付属の CD を聞きながら,2回くらい通しで読んだ程度).上の Speech and Language Processing と合わせて,発音を復習するのに非常に役に立った.
  • 英語学習用の小説:学習者のレベルに合わせて編集された(使われている語彙が簡単になっていたり,ストーリーが適宜省略されている)海外の小説を読んでいた.これはあまり長続きしなかった.どうも,学習者のレベルに合わせて編集された小説はあまり面白くない.邦訳を読んだことのある,クラークやチャンドラーの小説を読んだが,妙味が失われていて,無味乾燥としたものになっていたように思う.それはつまり面白い小説を読むためには語学力が必要,ということなのだろうが…….
  • ベルリッツ:この頃は,職場から英会話教室に参加するにあたって補助が出ていた(私が退職する前には既になくなっていたと思う).この制度を使って補助の出る範囲でしばらくベルリッツに通っていた.内容は,日常生活においてよく遭遇する場面を講師とロール・プレイするというもので,実践的ではあった.よく覚えているのは道案内をするという内容の回で,少なくともこの回は非常に役に立った(後述する IELTS の Listening が割とこういった日常会話をよく取り上げる).
  • 通信教育:職場が提供する通信教育のメニューがあって,上長の許可さえもらえれば無料でそれらを受講することができた.英語の通信教育もあったので,これを受講してみたことがある.テキストが送られてきて,そのテキストを予め定められたスケジュールに沿って進めつつ,ときおり作文などをして,どこぞに郵送をすると,添削をしてもらえるというものであった.加えて,ときおり電話で講師と,郵送した作文について議論をしたように記憶している(今から思うと実にアナログな教材である).これも今となってはどのように役に立ったかは定かではない.

書き出してみると割と散漫ではある.よくいわれる学習法として,海外ドラマを見る,というものがあるが,私はそもそもあまりドラマを見ない上,テレビの前でじっとしているのが苦手なので,そういったことはしなかった.見てみれば楽しいのかもしれない(特攻野郎Aチームとか supernatural だとかそういったものであれば……).

ほどなくして, TOEIC のスコアが900を超えた.あまり時間はかかわらなかったと思う(1年から2年くらい).この経験を踏まえると,ぼちぼち勉強していれば, TOEIC で900くらいはさほど困難ではないのだと思う.個人的には, TOEIC は Listening の方が簡単で,これは難しい単語が Listening にはあまり出てこないためだと思われる. Reading ではときおり謎の単語が現れることがあって,スコアを伸ばしていくためにはそういった単語を1つ1つ覚えていかないといけない.

TOEIC のスコアをどう考えるか,というのはなかなか難しい問題だとは思うが,これについて記憶に残っているのは, IBM の東京基礎研究所の所長を務めておられた丸山さんの Research That Matters という本である(この本はとてもいい本なのでおすすめします).研究者には英語が重要だ,というような節で, IBM の東京基礎研究所の研究員の TOEIC スコアの平均は800を超えている,という記述が(ポジティブな文脈で)あった.これは1つの参考になるのではないかと思う.

この頃を思い出すと,一応,目標は達成したものの,多少の安堵ばかりで,あまり喜ばしい気持ちにはならなかったことを覚えている.私の通っていた中学校と高校は帰国子女が非常に多い学校で,親しい友人の一人は中学生の時点で TOEIC で満点を取っていた(彼はそもそも語学力云々以前に非常に聡明だったが……).最近知ったのだが,母校に帰国子女として入学するために求められる英語力はべらぼうな水準のようだ.子供を帰国子女にしようと血眼になる親の気持ちがわからないでもない.加えて,前職の職場は語学力が高い人が多く,ようやく人並みになったという多少の安堵を覚えたばかりだったように記憶している.

よかったこと

  • ひとまず TOEIC のスコアを上げることを目標にして,合目的的に TOEIC の勉強をしたことはよかったように思える.
  • 結果的には,割と継続しやすく,趣味嗜好にあった勉強法であったように思える.本を読んで淡々と勉強するだとか,ニュースを聞く,というのは嗜好にあっていた.ドラマが好きな人はドラマを見た方がいいのかもしれない.

よくなかったこと

  • このときに養われた英語能力はかなり TOEIC に最適化されたものになっていて,自分が実際に英語を使わなければならない状況(国際会議など)にはあまり役に立たなかった.

国際会議は楽しめない

TOEIC のスコアが900に到達しても,しかし,特に変わることはなかった.国際会議に行っても発表は聞き取れないし,質疑で困るし,他の参加者とざっくばらんに話すということはもちろんできない.これは当たり前の話で,特段 Speaking や,学会などの文脈における Listening を勉強していないのだから,できるはずがない.

私個人の印象では, TOEIC だけを指標として考えた場合では,950前後が,英語での会話が何とかなる水準なのではないかと思う.バランスよく勉強した人であればまた違うのかもしれないが…….世間一般の想像する英語ができる人と, TOEIC のスコアが高い人は言うまでもなくかなり乖離していて,上の節でも書いたが, TOEIC のスコアを上げるだけであれば TOEIC に最適化した勉強をすればよいと思われる.問題は実用的な英語能力の方なのだった(この実用的な英語能力というのがなかなか難しいのだが).

この時期はひとまずの目標を達成してしまったが,しかし実用的な英語能力が身についているとはまったく言えず,どうすればいいのか,暗中模索していた.確か以下のようなことをしていたと思う.

  • 文法書:どうも, Speaking において文を作るにあたって文法を復習しないといけないのではないか,と考えたように思う.元から文法は嫌いではなかったが,自然言語処理の研究に携わり始めてから読むと見方がずいぶん変わって,文法書を読むのは楽しかった.覚えないといけないのが大変ではあるが…….
  • フィリピン英会話:有給休暇が異常に溜まっていたことがあり,その消化も兼ねて2週間ほどフィリピンの英会話学校に行った.結論からいうと,2週間ではあまり意味がなかったと思う.3ヶ月くらいいればまた違ったのではないかと思うが…….1日8時間程度,毎日マン・ツー・マンで英語の授業を受けていた.有益だったと思う授業の1つは発音の授業で,これは非常に役に立った.もう1つは英語でディスカッションをするというもので,毎回毎回,何かしらのトピック(ある種の倫理を問われるような状況が多かったように思える)についてああだこうだと議論していた.これはいま思うと研究者として必要とされる英語能力を醸成する機会になっていたように思える.同じ時期に来ていた人は Side by Side を持ち込んでこれを延々と勉強していた.いま思えば,このように自分で教材を持ち込んでそれに基づいて授業をしてもらった方が有益だった.

本当の(?)英語の試験

あまり時を置かずして,訳あって TOEFL や IELTS の勉強を始めた. TOEFL は大学の1年生の頃に一度受験して,そのときは確か Paper-Based Test (昔はまだ紙による試験があった)で500程度のスコア(実に悲惨なスコアだ)であったように記憶している.いま思うと,ここで目標を変更したのは非常によい選択だった. TOEIC で990を取るために細かい勉強をするよりは全体的な英語力の底上げになることに加えて, TOEFL は特にアカデミックな文脈を重視しており,国際会議などで必要となる英語能力と相性がよかった.

TOEFL の勉強を始めてから,今まで自分は英語の勉強をしていなかったことに気がついた.英語の勉強というよりは TOEIC の勉強をしていたのだった. TOEFL の Listening では,教授と学生の2人が英語で会話をしていて,レポートの進捗について云々,というような会話を聞き取り,その内容に関する設問に答えさせられる.レポートの提出期限が変更された,と教授が言ったことをちゃんと聞き取れるかということで,恐ろしく実践的である.学生生活において,宿題の提出期限が早まった,と他の学生が話しているときに,それを聞き取れないということを想像してみて欲しい.とんでもないことになる.

この頃はとにかく TOEFL の問題集を Reading / Speaking / Listening / Writing と買って,延々と勉強していた.まず日本語の TOEFL の参考書を買ったが,根本的に内容が不足していることに気がつき(量が足りない),その後は英語の TOEFL の参考書を買った:

  • TOEFL Reading: TOEFL の Reading はいま思えばかなり与しやすく,最初からそこそこスコアが取れたように記憶している.とにかく時間がないので,解き方に慣れるまでは大変だった.
  • TOEFL Listening: TOEFL の Listening の問題で思い出されたのは,小学生のときに中学受験のために勉強した国語の問題だった.これは,話者の気持ち(話の主題に対する話者の立場)を答えなさいというような曖昧な設問が出現するためで,完全に内容を聞き取ったとしても間違えることがある(問題集の中にはなぜその答えなのかわからない問題がいくつかある).この頃に感じたのは,ようやく英語そのものを勉強するのではなく,英語を道具として運用することを勉強する段階に入ったという印象で,このことは非常によく覚えている.聞き取ることが目標ではなく,聞き取ったことについて推論した上での回答が必要になるのは1つの境界であるように思われた.私にとってはとにかく Listening が難しく,公式問題集を延々と勉強していた.
  • TOEFL Speaking:ある特定の事柄について簡単に意見を述べよ,であるとか,学生の会話を聞いてそれを要約して述べよ,といった問題が出てくる.内容としては難しくないのだが,制限時間内に整然と内容を述べることはかなり難しい.基本的には事前に,こういった場合ではこういったパタンで喋る,といったテンプレートを用意しておいて(自然言語生成だ),それで何とかした. TOEFL Speaking は依然として難しい.
  • TOEFL Writing:英語で学術的な文章を書く機会が多かったためだと思うが, Writing も Reading 同様,スコアが取りやすい.問題は,文法や綴りの誤りなく, Writing 能力を示すために,かなり難しい単語を使って書かないとスコアが伸びないというところで,この点は学術論文と雰囲気が違う.

ついでに IELTS についても書いておこうと思う. TOEFL に比べて日本ではなじみがないが, TOEFL と同様に世界で広く通用するスコアであるし, TOEFL よりかなり与し易い.

  • IELTS Reading: IELTS の Reading は TOEFL の Reading と比べると文章が短く,出現する単語も簡単なので(ときおり風変わりな構文が現れることがあるが),非常にわかりやすい.少し勉強すればほぼ満点近く取れると思う.
  • IELTS Listening: IELTS の Listening は身近な話題が多く,ツアーガイドの説明を聞き取ったり,チケットの予約をしようとしている男性とオペレータの女性の会話を聞き取ったりする. IELTS の独特なところでは,ちゃんと金額だとか日時だとか,細かいところを聞き取れるかを問うてくるところで,このあたりは実践的である. IELTS の Listening は TOEFL のように長い対話を最初から最後まで一気に聞き取るようなものではないので,かなりやりやすい.
  • IELTS Speaking: IELTS の Speaking はインタビュー形式である. TOEFL のようにマイクに回答を吹き込むよりは,会話形式の方が私はよほどやりやすく,そのため IELTS Speaking は割と楽であるように思われた.出題される主題は身近なものが多いが,多岐にわたるので,事前にそれなりに準備は必要だと思われた.
  • IELTS Writing: TOEFL と異なり, IELTS では Writing が一番難しい.これは与えられた時間の割に書かなければいけない文章の量が多いためで,文章の構成をざっと考えたあとはひたすら文章を書く必要がある. TOEFL と異なり IELTS は全て手書きなので,回答用紙に文章を書かなければならない.そのためあとから文章を編集することが難しく,回答を書き始める前に構成を練る必要がある.

ちょっとチャレンジしてみるかという気になる

時間は多少前後するような気がするが,少し状況が改善されたと感じたのは,2013年の夏に参加した国際会議で,多少能動的に参加できたように思われた.この会議ではなかなか印象的なことが多かったが,自分とほとんど関係のない分野の研究者の飲み会に巻き込まれるということがあり,そもそもあまり親しくない人との飲み会というのはなかなか苦労があるが,英語でやらないといけないというのはなかなか大変だった.まあ,でも,飲んでいるうちにどうでもよくなるもので,このときに割と,まあ,なんとかやっていけるかもしれない,という気持ちになったことをよく覚えている.

翌2014年の夏には,国際会議に行くついでにこのときに親しくなった先生の研究室を訪問させてもらった.このときにはその先生とスコットランドのビア・バーでビールを飲み,その後ウイスキー・バーでウイスキーを飲んだが,帰路,英語を勉強しておいてよかったなあ,と心底思った.いろんな人と飲みに行く,というのは自分にとって非常に大きな動機付けだった.

危ないところだった

そんなこんなで,いろいろありつつも,昨年の半ばから大学の教員になった.私の所属している研究室にはアジアからの留学生が多く,彼らと会話をするときは基本的に全て英語にならざるを得ない.インドネシアから来ている博士学生などは私よりよほど英語がうまい.昨年の7月から10月頭にかけては,ケンブリッジ大学から自動要約分野で高名な先生が研究室に3ヶ月ほど滞在され,研究の議論をすることになり,ああだこうだと話をしていた.今のところ,(たぶん)ぎりぎり何とかやれているとは思うが,しかし,これはこれまで遅々とした歩みながらも勉強を続けてきたある種の成果なのではないかと思われる.もしあまり勉強をしてこなかったのであれば,もっとも,そうだとしたら教員になることはなかったと思うが,おそらくもっととんでもないことになっていたであろう.

振り返ってみて

相変わらず私の英語はひどいものだと思う.最近はまた別の目標があり,やはり依然として英語の勉強が必要なので,相変わらず勉強している.英語には悩まされる.いろいろ苦労した(いまだにしているが)上である種の収穫とでも呼べるものは,やればできる,という感覚である.勉強したので多少は,少なくとも昔よりはずいぶんよくできるようになったことは間違いがない.これはあまり参考にならないが,自分自身の性格と,勉強についてもちょっと記録して書いておこうと思う(本論とあまり関係がないので,適宜,読み飛ばしてください).

  • 自分は試験を受けることがさほど嫌いではないことは,振り返るとよいことだった.安くはない試験費用を払い,寒い日や暑い日に,休日にもかかわらず,試験中にお手洗いに行きたくなるとまずいので水分も我慢して,行ったこともない試験会場に出向くことは苦痛以外の何物でもないが,一度試験が始まってしまうと,そのあとの数時間はとにかく試験だけに集中すればよいので,雑事から解放されている試験中の感覚はとても好きだった.フロー状態とでもいえばいいのか,ぎゅーっと集中しているときの感覚は非常に独特で,むかし水泳/陸上をやっていたが,一心不乱にゴールに向かって泳いで/走っている感覚と似ている.人生,何かと考えないといけないことが多く,まったく参ってしまうが,試験中や競技中はとにかくそのことだけを考えればよいという言い訳が立つので,精神的には非常に楽である.
  • あまり勤勉な方ではないしもとよりあまり勉強ができる方であるとも思えないが,性格的にしつこいところがあるので,時間がかかっても何とか目標を達成しようというある種の執念というか妄執というか,そういったものがあったことはよかった.

何となくのまとめ

基本的な作戦としては,以下のような塩梅がよろしいのではないかと思う:

  1. 具体的な目標を定める:過去にも大勢の人々が同じようなことを言っていると思うので,情報量がないが,しかしこれは最も基本的なことだと思われる.過去に, TOEIC などの指標は,当人の英語能力のの実態を必ずしも正確に反映するものではないから,といって,具体的な目標を設定することを避ける人がいたが,私はそれはあまりよろしくないと思う.実態を正確に把握することはそもそも容易ではないし(実態とは何か,ということになるが,そもそも「実態」なるものを把握することはできないと思う),また目標を設定せずに努力することは難しい.試験のスコアは何らかの能力の近似だということを踏まえた上で,自分の英語能力をある程度,近似する指標として試験を活用していくべきだと私としては思う(自動要約の評価で ROUGE を利用することと似ている).また,その際には,よい指標に従って学習していく(最適化していく)ことが重要だと思われた.個人的には, TOEFL や IELTS を指標にしていく方がいいと思うが,これらの試験は受験そのものが大変であり(長時間にわたって拘束される上に,受験費用も高い), TOEIC とは比べものにならない難しさであることに加えて,勉強しなければならない項目も多いので,とりあえず TOEIC のスコアを上げていくという作戦でもいいかもしれない.個人的には英語の勉強に際しては TOEFL 100 か, IELTS 7.0 を目指すのがよいのではないかと思う(この2つのスコアは同等のものとして一般に扱われているようではあるが,個人的な印象では明らかに TOEFL の方が難しい.ちょうど外務省入省に TOEFL あるいは IELTS のスコアが求められるというニュースがあったが,スコアを達成するだけであれば IELTS に集中した方がよいと思われる).
  2. 目標としている試験をまめに受ける:研究であれば,システムを少しずつ変更するなどして,徐々に評価値を改善していく,といったことがよく行われる.この類推で,自分の英語能力というシステムを,勉強によって徐々に改善していき,その効果を試験でこまめに評価する.スコアが徐々に上がっていく様子を観察するのはとても楽しく,何よりも自分を強く動機付けてくれる.
  3. 延々と勉強する:一部の天賦の才に恵まれた人を除いて,自分の母語からその性質が遠く離れた言語を学習するということはそもそも難しいのだと思う.労なくして母語でない言語を習得するというのは,少なくとも私のような凡人には難しい.なんであれ,とにかく勉強するしかないように思われた.

勉強法などと言えるほどのものではないし,そういったことを述べる資格があるとは思えないが,もし修士課程修了時に戻って,再度,勉強するのであれば,以下のような作戦を取ると思う:

  1. 金で解決する:ベルリッツに行ったりフィリピンに行ったりはしたが,基本的には独学で,教材を買って自分で勉強していた.行ったことはないが,世の中には TOEFL 対策の学校などがあるので,そういったところに通った方がいろんな面でよいのだろうと思う.金を払っているので元を取らなければと思うだろうし(少なくとも自分は思うだろう),効率がよいと思われる.こういったサービスが提供されている地域は大都市が中心だろうし,また通うためにはお金も時間もかかるので,都市部にある程度のお金と時間がある状態で居住することは,身も蓋もないが効率のよい能力開発のためには重要なことであるように思われた.
  2. 誰かと一緒に勉強する:自分はまったくこういったことをしてこなかったが,同好の士,つまり同じように語学学習をしている人と一緒に勉強をすればもう少し効率良く勉強できたのかもしれない.
  3. 投入時間を増やす:ちょっとこれはどうすればいいのかよくわからないが,もう少し英語の勉強に時間を割くべきだったとは思う.冒頭の @niam さんのツイートに戻ると,時間をかけて勉強をしなければいけないことが数多くあることは,有限の時間を配分する上でも,精神的にも好ましくないので,時間があるうちに,いずれ必要になることは勉強しておいた方がいいとは思われた.

まあ,ひとまずこんなところで…….何かありましたら @hitoshi_ni までどうぞ.

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