入学式は IE Business School の学部があるセゴビアの校舎で行われた. IE Business School は,組織上は, IE University という大学の経営大学院という位置づけになっている.セゴビアはマドリードから約1時間ほどの場所にあり,世界遺産であるローマ時代の水道橋で名高い.今となっては笑い話だが,マドリードの中心部にある IE Business School のキャンパスからセゴビアまでの移動はバスで行われたが,私が乗っているバスがセゴビア市内で接触事故を起こすということがあった.いやはや,実にスペインらしい話である.
セゴビアの IE University のキャンパスは,中世の僧院を改装したもので,率直に言って学び舎としてこれほどのものはなかなか見つけることができないと思われるものである.入学式が行われた聖堂は,コロンブスが2回目の航海をイザベル1世から命じられたという場所であるらしく,入学式のスピーチは,この場所ほど, MBA という「航海」に出る君たちにとってふさわしい場所はない,というものだった.
入学式を終えるとまずクラス (Section) が分けられる.私は Section 3 だった. Section 3 はなかなか仲のよいクラスで,他のクラスではずいぶん険悪な雰囲気なところもあったようだ.今だに WhatsApp 等でクラスメイトの誕生日の度にお祝いのメッセージが流れ,クラスメイトから近況の update がある.
クラスの中では更に7人から8人で構成される Group が編成される. Group は学期 (Term) ごとに変わる. Term 1 の Group のメンバーは素晴らしい人々で,この Group は生涯の友人となる人々だった.何人か紹介してみたい.
Pablo はイタリア系移民のアルゼンチン人で,ニューヨークの弁護士事務所に務めていた弁護士だが,弁護士業に嫌気がさして MBA にやってきたということだった.リーダーシップがあり,さすがに法曹として働いていただけあり格調の高い英語を書くことができた.彼の添削にはレポート作成の際にずいぶん助けられた.
Carin はキューバ系移民のアメリカ人で,とにかく明るい性格であり,グループのムードメーカーであった.困難な課題にグループとして取り組んでいるときにも明るさを失わず,その性格にはずいぶん助けられたように思う.
Louise はカナダ出身のコンサルタントで,非常に聡明なチームメイトの一人だった.彼女とは後述する Financial Accounting で一緒にレポートを書いたが,彼女の英語能力と論理的な文章作成能力は素晴らしいものがあった.
MBA での講義はとにかく楽しかった.久々に学生に戻ったが,これからも継続的に機会を見つけて学生に戻り,勉強に専念する時間を持ちたいと思っている. Term 1 での講義は必修科目であり,その内容についていくつか述べてみたい.
Innovation in a Digital World
IE らしい講義なのだと思うが,現代的な技術の様々な分野への応用について学ぶ講義だった. Big Data や, Digital Transformation , Digital Marketing などのトピックが扱われた.なかなか面白い講義だったと思うし,技術的な背景を持っている自分には与しやすい講義であった.
Financial Accounting
いわゆる会計の講義で,財務諸表を読み解けること,そこから企業の性質を適切に解釈できること,また作成できることが目標となる.基本的には暗記が重要な性質の講義だと感じたが,社債の計算などは漸化式などが現れ,なかなか楽しめた.チームメイトと一緒に ZARA を運営する Inditex や Nike などの財務諸表を分析していたが,様々な知見が得られ,非常に有益な講義であった.
Managerial Decision Making
「意思決定」という名前の講義ではあるが,要は MBA に必要不可欠である統計や確率に関する講義で, Excel のソルバを使った資源の最適配分や期待値に基づく意思決定なども含まれる.私に取っては極めて身近な内容の講義で,さすがに成績はクラスで一番であった.いわゆる文系の学生はだいぶ苦労していたようで,私がいろいろと授業外の時間にチームメイトに教えていた.
Managerial Economics
Micro および Macro Economics の講義で,学部生時代にこの手の講義を取っていたので比較的容易であった.
Marketing Management
マーケティングの講義である.いわゆる Marketing の 4P であるとか,そういった基本的なフレームワークはもちろんのこと,豊富なケースによる講義は非常に勉強になった.マーケティングは実に面白いものだと思う.
Term 1 については,その期間中に米国の大統領選挙があり,トランプ大統領の当選で米国人クラスメイトたちがお通夜状態になっていたことが思い出される.米国外の MBA に行く米国人などは基本的にリベラルで, Carin などは当選の判明した翌日に泣いており,もうアメリカに帰りたくないから私と結婚して日本に住まわせてくれ,と半ば冗談めいて話していた.トランプの当選はそこまでアメリカのリベラル層に取って衝撃的なであるのかと印象に残っている.
Term 2 についてはまた次回に.